ギリシア神話でやらかしちゃった人たちの末路を大別!【後編】

ギリシア神話

はじめに

こんにちは、閲覧ありがとうございます。すずきです。

前回に引き続き、ギリシア神話上で「やらかしちゃった人たち」に与えらえた罰を、種類ごとに分けてみていきたいと思います。

前編では、命だけは助かり、生きたまま受けることになった罰とその罪人をご紹介しました。
前編はこちらからどうぞ。

今回の後編では、大変残念ながら、その罪のため死んでしまったパターンを紹介します。

この記事は
アポロドーロス著 高津春繫訳『ギリシア神話』、岩波文庫、1954
をベースに書かれています。

異伝が数多くあるギリシア神話ですので、他の本と見比べていただければと思います。またそれ以外に参考にした際は都度表記しております。

ふつうに殺される

地上での罰と冥府での罰の狭間として、「フツーに殺される」という罰があります。
神の怒りを買い、殺されて冥府送りになるんだけど、それ以上は描かれないタイプですね。

描写も、雷霆で撃った(=ゼウスが殺した)とあっさり書かれています。

神に殺される

例:サルモーネウス

 神に殺された人はあまりにも多いのですが、その中でもお気に入りのヒュブリス野郎サルモーネウスをご紹介します。

サルモーネウスは先に挙げた前編で触れたアルキュオネーの兄弟です。

彼はエーリス(ペルポネソス半島の西端)に市を建設し、非常に傲慢で涜神的な態度をとっていました。

というのは、彼は自分がゼウスであると称し、その捧物を奪って自分に捧げることを命じ、乾燥した革青銅の釜とともに戦車で引っぱって雷鳴していると称し、空にむかって火のついた炬火を投げて雷光を発しているのであると言ったからである。

アポロドーロス著 高津春繫訳『ギリシア神話』、岩波文庫、1954 第一巻Ⅸ,7

(具体的過ぎてまるまる引用しました)

この、必死さ……。

革と青銅釜を、戦車に「ヨイショヨイショ。これで俺もゼウスだ」とくくりつけている様子を思い浮かべるだけで……。お腹いっぱいになります。

まあ家来がやってたんでしょうけど。

ゼウスは怒って、サルモーネウスを雷霆で撃ち殺し、市民もろとも市を滅ぼしました(とばっちり)。

(仕向けられた)人に殺される

殺される方法は、何も神直々というわけではありません。
罪を犯した人の周りの人に働きかけ、間接的に殺すパターンも数多くあります。

例:アクタイオーン

彼は智者ケイローンの教えを受けた狩人でした。

しかし、ある日アルテミスの沐浴を見てしまい、女神に鹿に変身させられてしまいます。

加えてアクタイオーンの飼っていた50頭の猟犬を狂わせます。

猟犬たちは主人とは知らず、鹿を食い殺しました。

 猟犬たちは自分たちが食い殺したことに気付かずに主人を探し回ります。
 ケイローンだけは事実をわかっていたので、この犬たちのためにアクタイオーンの像を作ってあげたそうです。

アルテミス自身が弓を引けばさっさと殺せそうですが、そうはしないんですよね。

間接的な殺害はやらかしちゃった当人だけでなく、狂わされて殺す側に回った人も可哀想です。

可哀想なワンちゃんたち……50頭もの。
たぶん50頭に鹿1匹は物足りないですよね。

冥府での罰

 さていよいよ地獄で罰を受けているTHE・罪人という人たちをご紹介します。

タルタロス幽閉

例:巨神族

クロノスを初めとする巨神族(ティターン神族)と、その息子世代のゼウスたちの王権争いをティタノマキアと呼びます。

そこで紆余曲折ありながら、ゼウスたちは兄弟姉妹と共に勝利を収めます。

刃向かったティターンたちを冥府に送り込みますが、彼らは神なので死ぬことはありません

ということで「幽閉」となっています。

このタルタロスが具体的にどのあたりにあるのかは定かではありません。

幽閉しているのだから、普通の死者たちが行く場所とはまた違いそうです。
同じだったら、冥王ハデスは毎日顔を合わせて気まずいでしょうし。

ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』の松田治・青山照男訳では、152話の訳注としてこう説明されています。

タルタロスは、ハーデースが支配する冥府よりはるかに深い地域を指す名称で、ここに数々の神々や怪物どもが幽閉された。

納得。

おそらく彼らは幽閉されているだけで、タルタロスでさらに何か痛めつけられているというわけではないようです。
一応、神様ですしね。

そういえば太陽神ヘリオスってティタン神族だと思うけど、ちょろちょろ神話に登場しますよね。
幽閉されてないんでしょうか。

地獄での責め苦

例:タンタロス

ゼウスの息子タンタロスは、父から気に入られていました。神々の食卓に同席することも許されていたほどです。

しかし、そんなこんなで教えてもらった神々の秘密を人間にバラしてしまったため罰せられることになります。
(秘密の具体的内容は定かではない)

また、神々の食べ物アンブロシアを人間の仲間に分け与えようともしました。

タンタロスは冥府にて、顎までに浸かっており、頭上には果実の生る木が生え下がっています。

彼が喉が渇いて水を飲もうとした瞬間、水位がすーっと下がり、口が届かず、
飢えて果実を食べようとしたら、風が吹いてひょいと木が上へ上がってしまうのです。

どんなに飢えても渇いても、もう死んでるので死ねません。

地味だけどあまりにも辛い責め苦をタンタロスは受け続けることとなりました。

首をめいっぱい伸ばしたり、顎を懸命に引いたり、大変そうなタンタロスの姿が浮かびます。

この、「目の前にあるのに決して手に入れられない状態」を「タンタロス状態」とも言うらしいですね。

例:シーシュポス

 こちらも地獄での責め苦で有名なシーシュポスさんです。
 シーシュポスはコリントスの創設者で初代国王でした。

ゼウスがアイギーナという娘を奪った際に、
娘を探すアイギーナの父である河神アイソーポスに「ゼウスが攫って行ったんだよ」と教えてあげました。

ゼウスはこれに怒り、シーシュポスを罰することに。
もちろんさすがにこれだけで永遠の責め苦ではゼウスの心が狭すぎると思いますが、アポロドーロスによると罪に関してこれだけの記述に留まっています。

彼が地獄で受ける責め苦は、「岩を坂の上まで懸命に押し上げ続ける刑」です。

大きな岩を手と頭を使って懸命に転がし、坂の上まで押し上げます。
けれどもあと少しで頂上に着くというところで__

ごろごろごろごろ。

これを永遠に繰り返します。無情。

まとめ:傲慢はダメ、ゼッタイ。

以上、ギリシア神話でやらかしちゃった人の末路を、例とともに見てきました。
お気に入りの罪人はいましたでしょうか。
すずき的にはやっぱりサルモーネウスさんです。

傲慢の末路は恐ろしいですね。

人間は神々との絶対的な差を常に自覚し、相応の態度をとり続けなくてはいけないのです。
誰であろうと涜神と傲慢は決して許されませんので、気をつけたいところです。

もう少し気になるのはタンタロスやシーシュポスの奇妙な責め苦の内容です。
これは犯した罪の内容とリンクしているとわかります。

・タンタロス
 神々の食卓に同席/神々の食べ物を不正に分けようとした→飲み食いできない罰

・シーシュポス
 アイソーポスに告げ口されたゼウスは身を隠すために一時的に岩に姿を変えた→岩を転がし続ける。

他の責め苦を受けている例も含めて検討する余地がありますね。
またの機会で。

では、ここまで読んでくださりありがとうございました。

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