英雄テセウスが“掃討”したイカれた男たち【もはや怪物】

ギリシア神話

はじめに

こんにちは、閲覧ありがとうございます。すずきです。

ギリシア神話の英雄として、テセウスという名高い男がいます。

テセウスは人間の女性アイトレーと海の神ポセイドンの子供ですが、ちょうど同じ夜にアイトレーと逢い引きしていたアイゲウスの子どもとして生まれます。

アイゲウスはアイトレーと交わったトロイゼンからアテナイに帰るため、
父親の目印として刀を岩の下に隠し、そのことをアイトレーに告げて去って行きます。

成長したテセウスは母に言われ、この小刀を取り出し、父親に会いにアテナイへ出発するのでした……。

このような経緯でアテナイへの旅路を始めたテセウス。

彼の業績としてミノタウロスなどの怪物退治やが挙げられます。

しかしテセウスが退治した相手はそれだけではありません。

今回は英雄テセウスの旅路で登場し、やっつけられた奇妙な男たちを紹介したいと思います。

この記事は
・アポロドーロス著 高津春繁訳『ギリシア神話』(岩波文庫、1953)の第三巻ⅩⅥ/摘要Ⅰ1~4

・ヒュギーヌス著 松田治・青山照男訳『ギリシャ神話集』(講談社学術文庫、2005)の38話 テーセウスの功業
を元に書かれています。

テセウスが倒したイカれた男たちをご紹介!

ペリペーテース:鉄棒男

テセウスがアテナイに行く道は悪人が蔓延る道でした。
そんな魔のルートを通りだして最初に出会ったのがペリペーテースです。
場所はエピダウロス(ペロポネソス半島の東部)。

彼にはコリュネーテースすなわち「棍棒を持つ男」というあだ名がついており、
アポロドーロスによると、足が弱いので代わりに鉄の棍棒を持って、通行人を殺していたのです。

テセウスは彼を殺し、棍棒を奪いました。

~感想~
足が弱いなら戦わなければいいじゃん。
百歩譲って弱点を棍棒でカバーしたとして、なぜわざわざ通行人を殺したのでしょう。

ペリペーテース イカれ度★☆☆

シニス:松曲げ男

次に出会ったのは、シニスです。コリントスで出会いました。

彼はピュテオカンプテース「松を曲げる男」と呼ばれていました。

シニスは通行人に自分と一緒に松の木を曲げることを頼みます。

地面に向かって二人で松をぐいーっとやっているとき、シニスはぱっと力を抜きます

そうすると、押し曲げられていた松の木が反動でびんっと元に戻ろうとし、
その勢いで通行人は弾き飛ばされて死んでしまうのです。

テセウスはシニスが旅人に対して行った方法と同じやり方でシニスを殺します。

~感想~
人を殺したいとして、この方法が思いつくのがすごい。手が込んでいる

「すいませ~ん、俺と一緒に松の木を曲げてくれませんか?」
みたいな小芝居を挟む手間をかけて殺害していると思われる。
そしてわかっているはずなのに同じ方法で殺されるのも謎です。

シニス イカれ度★★★

スケイローン:足洗わせ男

クロミュオーンでの暴れ猪の退治を挟み、次にテセウスが出会ったのはスケイローンでした。

彼は海に面した切り立った岩場に座を占め、通りかかった旅人に自分の足を洗わせました

旅人が足を一生懸命洗っている最中に、足でドンっと旅人を押し、海へ突き落とし殺すのです。

アポロドーロスの方では、海に落ちた旅人は、そこにいる巨大な亀の餌となるとされています。

テセウスはスケイローンも、彼と同じ方法で殺しました。
スケイローンのいた岩場は、彼の名前をとって「スケイローニダイ」と呼ばれるようになりました。

~感想~
なんか地味だけど普通にむごい。

そしてテセウスの足を洗ったのもやはり謎。
おそらくテセウスの圧がすごく断れも逃げもできなかったのでしょうね。

「お前はさぞかし人の足を洗うのが上手なのだろう。なんてったって、お前自身たくさんの者に足を洗わせたのだからな」
「ヒィッ」
「洗え(圧)」
「は、はい……(あー俺死ぬわ)」
みたいな。英雄パワー。

スケイローン イカれ度★★☆

ケルキュオーン:相撲ふっかけ男

エレウシスにてテセウスはケルキュオーンと出会います。

彼は通行人に相撲をふっかけて、相撲をしている最中に殺します

ケルキュオーンはテセウスにもデスマッチ相撲をひっかけたのでしょう。
そうして、テセウスに、高く持ち上げられ→地面に叩きつけられ木っ端微塵にされました。

~感想~
テセウスの方が怖い。

ケルキュオーン イカれ度★☆☆

プロクルーステース:寝台ぴったり調節男

最後はプロクルーステースです。
彼はポリュペーモーンやダマステースとも呼ばれます。

彼は道の傍らに家を構え、通行人を家へ招き入れます。

家の中にあるのは、大きい寝台と小さい寝台

通行人が小柄な場合は大きい寝台に寝かせ、その寝台にぴったりサイズになるよう身体を槌でドンドン叩いて(あるいは、重しを乗せて)打ち伸ばします

反対に通行人が大きめの場合は小さい寝台に寝かせ、寝台にぴったり収まるようにはみ出たところをのこぎりでギコギコ切り落とすのです。

こうして通行人を殺していました。

テセウスは彼を殺しました。(殺害方法は不明。普通に拳かもしれない)

「プロクルステスの寝台」は無理やり基準に一致させることを表すたとえとして使われています。

~感想~
だいぶスプラッタですね。
槌やのこぎりといった道具を用いることからも、狂気的な好奇心の匂いがします。

ダマステース イカれ度★★★

まとめ:もうお前らが怪物だろ

こうしてテセウスはアテナイまでの道を掃討して父に辿り着きました。

以前にギリシア神話に登場する怪物についての記事を書きました。(こちらからどうぞ)

そこで、怪物の定義について、

「異形で、人々を困らし、英雄的人物に対処される一回的な存在」

と個人的に規定してみました。

……どうでしょう。

こいつらは、異形じゃないだけで、それ以外は怪物も同じじゃないか?

なんかどちらもポセイドンの血が混ざりがちなのも偶然か?
それを言うならテセウス自身もだけど。

ぐぬぬ。

イカれ度は松曲げ男シニスと寝台ぴったり調節男プロクルーステースが星三つとなりましたが、
その地味さと突拍子もなさからシニスを優勝とします

この奇妙さを讃え、ゼウスは彼を天に上げ、松曲げ男座としました(大ウソ)。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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