ギリシア神話を原典で読みたいなら、これを買うべし! ギリシャ&ローマの古典八選。【前編】

ギリシア神話

はじめに

こんにちは、すずきです。

ギリシア神話は神話の中で最も有名と言っても過言ではないでしょう。

 ヨーロッパの芸術作品の多くは、これら神話を共通の理解としてモチーフに取り上げていますし、日本でも聖闘士星矢などのアニメを始め、ソシャゲや文学作品でおなじみです。

 しかしギリシア神話は、古代において古代ギリシア人の宗教だったにも関わらず、明確な聖典がありません

 キリスト教でいう聖書、イスラム教で言うコーランみたいのがないのです。

 つまり、これを読んでおけば、ギリシア神話を完全に網羅だぜ! みたいのは無理な話なのです。

 ギリシア神話に触れるのは、先述のような創作作品か、「ギリシア神話集」や「漫画でわかる! ギリシア神話」といった、後代の人による編集やまとめが主だと思います。

 そう言ったもので、神話への興味を膨らませた後、「当時に伝わったままのギリシア神話が読みたい!」となる場合、何を読めばいいのでしょうか。

 ということで勝手ながら、これを読んでおけばギリシア神話を読んだと言えるよ、という古典作品をご紹介します。

 というか、私がこのブログを書くにあたって、この辺りの本を一次文献として参考にしていますよ、という申告に近いです……。

 先ほど、「ギリシア神話の本は多くが後代の人によるまとめだ」と述べましたが、それはこれからご紹介する本のいくつかにも当てはまります。
 正直、聖典が無いんだから神話が信じられていた当時に関しても、現代と似たような状況だったといえます。
 しかし、まとめた人が近現代の学者か、実際に信仰の中にいた人かでは大きく重みが変わってくるでしょう。

ヘシオドス二作品

『神統記』

 ギリシア語での原題はテオゴニア。
 テオは神、ゴニアは生まれるという意味の動詞を-イアを付けて中性名詞化したものですので、ざっくり言って「神々の誕生」と言う意味です。
 それが日本語になると、神統記……かっこいい。

 ゼウスにアフロディーテ、アテナ、アポロン……と、ギリシア神話の神々はたくさんいます。多神教です。
 その主要な神々について、「誰々は誰々から生まれた」「誰々と誰々が交わって誰々が生まれた」という描写で、その家系譜が語られます。

 とはいえ、それだけではありません。

 この神統記は神の系譜を辿ると言う本筋と同時に、「ウラノス→クロノス→ゼウス」という最高神の三代にわたる世代交代と、それに伴う激しい戦いが記述されています。

 ギリシア神話の最高神というとゼウスですが、ゼウスも最初からそのポジションだったわけではなく、母から生まれ父に追われながらも兄弟たちとの共闘によって今の地位を手にいれたのです。

 だから神統記はギリシア神話の数多くの細かいエピソードを読んでいく前に、土台として内容を入れておくのがおすすめです。

『仕事と日』

 同じくヘシオドスの作品です。

『神統記』が神々について語るものだとしたら、これは人間についてのお話です。

 体裁は、ヘシオドスが弟のペルセースに対して人間のやるべきこと、一年の農耕の取り組み方などを教えるものとなっています。

 ヘシオドスの弟のペルセースは、作中にて兄から愚か者と言われており、非常に俗っぽくて、彼自身は登場しませんが、共感するし、なんだかかわいい。

 こちらは神統記と比べると、神々がどうこうという話は薄いです。しかし、むしろ、その当時の人々が、実際の生活の中で、どのようなことに神との関わりを見いだしていたのかが掴めます。

 もちろん神話的な内容もあります。

 ここでは黄金の時代から鉄の時代までの、人間の世代交代について言及されています。

 「黄金の時代は働かなくて良かったが、どんどん人は低俗になり、我々鉄の時代の人は汗水垂らして働かないと飢えと渇きで死んでしまうよ」と。

ウラノス→クロノス→ゼウス
黄金の時代→銀の時代→青銅の時代→英雄の時代→鉄の時代

 こう見るとギリシア神話の大事な要素として「世代交代」が見いだせます。

 『神統記』ではちょろっとしか登場しなかった正義の女神ディケーに関しての記述が多いなど、ここでしかわからない神の姿などもあるので、読んでおくといいでしょう。
 世代交代という要素が、正義の女神として重複していそうなテミスとディケーなどにも見出せそうですね。

ホメーロス二作品

 ヘシオドスと並んでたたえられる詩人にホメーロスがいます。

 これからご紹介する彼の作品は、あまりにも有名ですが、実際にホメーロスという人物がいたのか定かではありません。

 なぜなら、ヘシオドスとは対照的に、彼の作品において、ホメーロスが自分を出すことは一切無いからです。

 たとえばヘシオドスの『神統記』には、
筆者であるこの私ヘシオドスは、詩歌の才能をムーサたちよりもらった
とあったり、

『仕事と日』では、筆者ヘシオドスだけでなく、弟のペルセースまで、その影を見せます。

 しかし『イーリアス』『オデュッセイア』の中で、「俺ホメーロスは~」みたいな記述はまったくありません。

 また『イーリアス』のところどころに、既存の神話の歌から引用したと考えられる箇所もあり、実際にホメーロスという一人の人間が、これらの物語を語ったのか、議論の余地が多分にあります。
 ホメーロスなんていない。その当時語り継がれていた物語をまとめて、ホメーロスという名前を適当に置いただけのものだ! 派と
いや、語り継がれた物語を、ホメーロスという男が美しく文学的な傑作としてまとめ上げたということが重要なんだ! 派と、 いろいろ立場はあり議論は続いているようです。

『イーリアス』

 そんなホメーロスの作品は、『イーリアス』→『オデュッセイア』の順に読むのがおすすめです。
 ヘシオドスの作品を読んだあとだとびっくりするはずの、ボリューム感があります。
 この二作品はどちらも、「トロイア戦争」について描いたものです。

 さて、トロイア戦争というと、英雄の時代の最後の出来事と言われています。

 先ほど述べた、人間の五つの世代の四番目が、英雄の時代です。
 鉄の時代は私たちが生きている頃ですので、英雄の時代までが神話の範囲内となります。
 つまり『イーリアス』『オデュッセイア』は神話の最後を飾るグランドフィナーレということです。

『イーリアス』の主人公は英雄アキレウス
 彼を中心として、ギリシア側の連合軍と、小アジアの国トロイア軍との十年にも及ぶ戦い……の十年目以降を描きます。

 アキレウスも英雄といえど、あくまで人間であり、彼の活躍や苦悩を描きながら、大戦争の終着を追う、文学的にも優れた作品となっております。
 トロイア戦争は人間の間でのことですが、それぞれの軍を応援している神々も暗躍します。

 内容はトロイア戦争がメインですが、作中の昔話などで、細やかな神話のエピソードが挿入されていますので、そこも見逃せません。
 私たちが神話を読んで楽しむように、作中で英雄たちが神話を聞いて心を奮い立たせるなどしているのが感慨深いです。

『オデュッセイア』

 こちらの作品は、トロイア戦争後の話です。

 主人公はオデュッセウス。ゼウスにも匹敵する智恵を持った男です。
 彼もトロイア戦争に参加して大活躍を収めます。

 しかしトロイアに勝利した時に、やり過ぎてしまうんですよね。そのためポセイドンの怒りを買います。

 トロイアから故郷のイタケー島に帰るまでの間、様々な苦難がオデュッセウスたちを襲い、帰るまで十年もかかってしまいます。
 その苦難の航海を描いた作品が『オデュッセイア』というわけです。

 オデュッセウスは神々の加護を受け、めちゃくちゃいい男であるため、船が行く先々で女性たちに惚れられます。ときどき流されたりしながらも、故郷で待っている最愛の妻ペネロペのことを想い、二十年ぶりに帰還を果たすのです。

 残されたペネロペも息子のテレマコスも、こちらはこちらでイタケー島で大変な目にさらされるのですが、無事ハッピーエンド。 オデュッセウス一家の絆! の物語です。

「戦争には勝利する」「家族も守る」、「両方」やらなくっちゃあならないってのがオデュッセウスのつらいところだな。

 血なまぐさい戦争とはひと味違う英雄の姿が描かれている点においても非常に優れた作品と言えますね。

後半に続くよ!

 ということで、ヘシオドスとホメーロスの作品で、ギリシア神話の始めと終わりは掴むことができました。

「じゃあゼウスが乙女を誘拐したとか、ゼウスが美少年を誘拐したとか、そういうもろもろのエピソードは何で読めるの?」

 はい。そういういわゆるギリシア神話のちょろちょろした話は、古代ギリシアやローマの詩人がまとめたギリシア神話集で味わうことができます。

 後半へはこちらからどうぞ。

 とりあえず前半部、お読みいただきありがとうございました。

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