シナノゴールドを磨いて黄金の林檎を作り、私がエリスになる(←ヒュブリス)

神話の雑記

2024年4月20日、午前8時43分。

すずきはこう思った。

そうだ、リンゴ磨こう__。

黄金の林檎をつくる

『神統記』をはじめ、ギリシア神話にたびたび登場する神聖な果実、黄金の林檎。

黄昏の女神へスぺリスの園に生え、竜(蛇)が見張っているという伝説の果実。

以前、『神統記』と「創世記」を扱った際にふれましたが、黄金の林檎はギリシア語で「παγχρύσεα μῆλα」(パンクリュセア メーラ)。

このμῆλαは=リンゴではなく、「木になる果実」という意味でした。なので、黄金の林檎と言っても、「大変貴重で神聖な果実」というニュアンスです。

しかしながら、日本語訳で読んだら、思い浮かぶのは、金色でピカピカのリンゴ!

そう、黄色いリンゴを磨いてピカピカにしたらそれっぽくなるのではないのだろうか。

用意するもの

  • シナノゴールド 一個
  • 柔らかい布 一枚 (家にあった液晶用クロスで)
  • 時間と気概

必要なものはいたってシンプル。何より、気概が大切です。

磨いていく

用意したシナノゴールド。写真では黄緑っぽいが実際にはもう少し黄色。

一応磨く前にインターネットでリンゴ磨きについて検索をかけました。

そうすると、結構多くの人がリンゴを磨いているようです。

そして英語では「リンゴを磨く」という表現が、日本語で言う「胡麻をする」という意味だそう。ちょっとした豆知識を得ることはできたものの、具体的なコツは記載されていません。

ただ皆ひたすらに磨いている。コツなんぞないのでしょう。

リンゴを磨いていく。

 磨き始めて数分、さっそく手応えのある光沢が出始めました。さらさらしていた表面がぺたつくように変化しています。

このピカピカの正体は、りんご自体が持つ自然の「ろう物質(天然のワックス)」です。これはパラフィンやアルコール、飽和脂肪酸でできていて、鮮度を保つためのものなので食べても安全です。

果物情報サイト 果物ナビhttps://www.kudamononavi.com/columns/view/13#:~:text=%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%AF%E3%80%8C%E6%B2%B9%E3%81%82%E3%81%8C%E3%82%8A%E3%80%8D%E3%81%A8,%E3%81%9F%E7%9B%AE%E5%AE%89%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%88%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

リンゴの皮に含まれているロウ物質が、磨くことで出てきて(摩擦で溶け出るのか?)、表面が光沢を見せるそうです。

途中経過:30分後

両手が塞がっているので読書もできず、かと言ってテレビドラマを見る趣味はないので、ただひたすらリンゴと向き合う時間に。

磨いている最中のテーブルの振動で、ティーカップの表面が躍り紅茶が一面にこぼれる。

さて、30分が経過しました。シナノゴールドの様子はこちら!

30分磨いたシナノゴールド。十分つやつや。

なんと、十分つやつやのピカピカではないでしょうか!

黄金とまではいかずとも、光が反射し輝いています。

ここでやめとけばいいのに、欲を出したすずきはもう少し磨いてみることに。

一時間後

腕の疲れが出始め、飽きも襲ってきます。

近くにいた母からも「飽きた」との声があがる始末。「母さんが磨いているわけではないじゃん」と言ったら、私がリンゴを磨いているという状況に飽きたそうです。

リンゴ磨きへの新鮮さももはや薄れ、頭の中に別のことが浮かび上がっては消えていきます。

「院試の研究計画書どうしようかな」

「IELTS、ひどかったな。勉強しないとな」

「ラテン語の格変化、ギリシア語より難しくないか。いやあれは教科書に少し難があるんだ……」

「新しい小説、筆進まなすぎ。いや、今は卒論と院試に集中すればいいんだ……」

ふと視線を落とすと、磨き続けたといって、目覚ましい変化を見せないシナノゴールドが手の中に収まっています。

次第に光沢具合の上げ止まりに気付き始め、手の動きも緩慢になっていき、ため息が出そうになったので、この辺で磨くのを終了とさせていただきます。

一時間磨いたシナノゴールドがこちら。

一時間磨いたシナノゴールド。30分時点と大差なし。

はい、30分前となんら違いありません。リンゴを磨くなら30分でいいでしょう。

黄金の林檎、完成

やったー! みなさーん、「黄金の林檎」が完成しましたよー!

黄金の林檎、完成。

まあ、そこまですごくはないですね。ただぴかぴかしているシナノゴールドです。

とはいえ、ここではこちらを黄金の林檎として、私がエリス女神ということでよろしいでしょうか。

よろしくないです。

人間ごときが自らを神と同等とすることは、ギリシア神話上で最も重い罪(ヒュブリス)になり、殺されたり、地獄で永遠の責め苦を受けたりするので注意しましょう。

私が受けるのは、リンゴを磨いて綺麗にしても、すぐに腐ってしまい、新しいのでやり直しし続けるという責め苦かもしれない。

黄金の林檎で遊んでみる

黄金の林檎で最も有名なエピソードといえば、エリスの引き起こしたヘーラー、アテネー、アフロディーテとのいざこざです。

争いの女神エリスは、神々の中で一人だけ、海の女神テティスと人間ペーレウスとの結婚式に呼ばれませんでした。

彼女は腹いせに結婚式場へ、黄金の林檎を投げ込みます

そのリンゴには「最も美しい女神へ」と書かれており、これを貰うのに誰がふさわしいのか諍いが始まりました。

そしてヘーラーとアテネーとアフロディーテの三女神が美しさを競うという「パリスの美女判定」へ繋がります。さらにその結果としてトロイア戦争が引き起こされるのです。

この「最も美しい女神へ」というのはギリシア語で、「καλλίστῃ(カリステーイ)」、形容詞「καλός(カロス)」美しいの最上級(最も美しい)で、単数女性形の変化なので、「最も美しい女神」を指し、

与格(間接目的語)になっているので、「最も美しい女神へ」という意味の一語となっています。

紙と糸を用意し、少し遊んでみます。結婚式場に投げられたのはこんな感じでしょうか?

黄金の林檎ごっこ

でも紙で宛名を添えていたら、投げ込むときにぽろっとどこかにいってしまいそうです。リンゴ自体に刻んでいたんでしょうか。

ちょっと言葉を変えてみます。

言葉を変えて黄金の林檎ごっこ(ギリシア語間違ってたらすみません)

「暇人へ」

はいはいはい、私です、すずきです。

まあこの言葉での「暇人」はとてもポジティブな言葉として使われています。暇で可哀想というよりは、ゆとりのある人。

スクール(学校)が「σχολή(スコレー)」余暇から来ているとおり、スコレーは学の営みの出発点なのです。じっくり考えるには時間が必要ですからね。

リンゴを磨く暇があることが、学知に繋がるかは怪しいところですが、こんな休日もたまにはいいでしょう。

実食!

せっかく磨いたので皮ごと食べましょう。

暇人宛ての黄金の林檎なので、私がありがたく食べさせていただきます。

そういえば、神話上で実際に黄金の林檎が食べられているところって無いような。
死すべき人間ごときが、ほんと、スイマセン。ありがとうございマス。

せっかく磨いたので皮ごといただきまーす!

むしゃ。

「ぬるッ!!!」

長いこと手に持って磨いていたからすっかりぬるくなってしまった……。

それでも、シナノゴールド美味しいです。初めて食べました。いつも食べているのは赤いリンゴなので。

磨いてみて、赤いリンゴの方が光沢感、磨きの成果がわかりやすいなとは感じました。

リンゴを磨くなら、①赤いのを、②30分以内で、③磨いたらまた冷やしてから食べる、がベストですね。

ここまで、お付き合いいただきありがとうございました。
リンゴ農家さん、卸売市場の方、スーパーの方にも感謝します。

エリス様、先ほどの文句はブログの記事を読んでくださる人を楽しませようとして書いたものであって、本心ではございません。私は己が死すべき存在であり、貪欲な胃袋も同じな種族であることを自覚しております、どうかお許しください。

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